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BEPro教材を実際に「英語で学ぶ経営学」という授業で使用されている、東洋大学の井上先生に色々とお話を伺いました。

 
― 大学におけるビジネス英語教育についてお話しを伺えますか。

内容を知りたいと思う気持ちが、学習意欲につながる

  私の所属する経営学部では、一般教養英語とは別に、専門英語の講座を設けています。大学で学ぶ英語は中学、高校で学ぶ英語とは違います。経済・経営系の学部であれば、ビジネス誌を読めるようになる力を誰もが望んでいます。

 ビジネス誌が読めるようになるのは理想ですが、ではどうやってそれを、教えたらいいのか。各教科書会社からは「時事英語」「ビジネス英語」系のテキストが相当数発行されていますし、時事英語の教材は毎年改訂されています。しかし教材化に時間がかかるのでどうしても内容的には古くなり、結局は過去の話題になってしまいます。もちろん、学生にとって興味のあるテーマを扱おうとの努力は認めますが・・・。
  ビジネス誌を読みたいと思っている学習者にとって、最大のモチベーションになるものは、やはり「内容を知りたい」ということですよね。
 内容を知りたいと思うがゆえ、辞書を引くといった労力もいとわなくなるわけです。

 それこそ、「日本経済新聞に大きく取り上げられているようなホットな話題を英文記事で読みたい」、あるいは「海外メディアはどう見ているのだろう?」といったように、知りたいと思う気持ちを起こさせるというのが、ビジネス英語を教える上でとても重要なポイントになると思います。
 その意味からも、この教材は最新のニュース記事を教材として読めるということが最大のメリットです。

 私は、ビジネス・ウィーク誌、エコノミスト誌などを教材に、大学の教員になる前から社会人を中心に教えていたことがあります。
ビジネス誌というのは、学ぶ側にある程度の英語力と学びたいという強い意志がないと、なかなか読めるようになりません。有名大学の学生も受講していましたが、やはり彼らも最初はビジネス誌を読めませんでした。ビジネス英語を学ぶことはもちろん、英語だけの問題ではありませんので、十分な背景説明をする必要があります。
 用語でも英和辞典では理解できないものが沢山あります。そういうところでつまずいてしまうのですね。例えば、決算期になると散見される用語にprofit warningがあります。これなども単語レベルでは「profit=利益」「warning=警告」として、学生にもわかるのですが、二つが合わさると何の意味だかわからなくなってしまうのです。profit warningは「業績の下方修正」という意味になるのですが、ほとんどの学生が「利益の警告」というように訳してきます。実際には、これまで発表していた一株当り利益などの見通しが達成できなくなる恐れがある、ということでアナリストや企業が業績予想を下方修正するということなのです。
 実際の業績のみならず、そうした業績の見通しによっても株価が動くのだというような株式市場の実態をわかっていないと、profit warningなどの用語のニュアンスをつかむことは難しくなります。

 

本当に最新の話題が教材になっているのは BEPro だけ

 例えば来週IBMの決算発表がとても注目されていて、株式市場がナーバスになっているとします。そんなときには「来週のハイテク企業の一連の動きに注目していこうね」と、今起こっていることを学生とともにライブ体験します。そうすると、ビジネス誌を読もうという気持ちが起きてくるのです。そういう意味では、繰り返しになりますが、up to dateな素材を使った教材というのは本当の理想なのです。でも「そんな理想的な教材はありえない」と思っていました。昔は、面白い記事を見つけて教材として提供しようと試みたこともありますが、やはり難易度が高くて苦労していました。

 現在もNewsweekなどの記事をコピーして最新のニュースを授業で読ませている先生は何人もいます。ただ、これが経済やビジネスとなりますと教えられる先生はどうしても限られてしまいます。やはりある程度の経済や経営の専門知識が必要となります。ただ、そうした専門知識を持っていても最大のポイントは教材なのです。

大学の英語は、単に英語を学習するという目的だけではなく、英語を通して知識を得るということが重要なのです。また、世の中の動き、グローバルな動きを知るということが大切になります。
 
― 井上先生は、BEProの教材の中でも特にBasic Levelが学生の皆さん向けだとおっしゃっていましたね。具体的にこの教材をどのような形で利用されているのですか。

授業の現場での BEPro はこのように使われている

 「英語で学ぶ経営学」という授業で使っています。毎週火曜日にクラスがあるので、前の週の一週間の教材の中から記事を選んで授業に向けて週末に準備をしています。記事はFeatured Articlesの中から1本を選び、その他に重要なニュースの要点をまとめたWorld Scopeから3本をピックアップします。

1) World Scope から3本を選ぶ。
選択のポイントは、日本のメディアからは読み解くことができないグローバルな視点から見たところのニュース。とりわけ何故それらがグローバルビジネスを動かしているかを理解するために、3本を選んでいる。同時に、その内容にマッチする日本経済新聞の記事も選ぶ。これはWorld Scopeを解説するときの参考資料として配布するため。

2) World Scopeに問いを付ける。

3) BEProのBasic Level(Featured Articles)から1本の記事を選ぶ。

 
― Pre-Readingは記事の内容の吸収力を高めるために非常に重要なセクションと位置付けていますが、先生はどのように思われますか?

Pre-Reading セクションの重要性について

 学習者にとっては、このステップを踏むことが非常に重要です。また、読むことがとても楽になるのです。何故かといいますと、この段階で疑問を投げかけます。例をあげてみましょう。ここに「Toshiba to Recall 340,000 Sony-Made PC Batteries」というBEProの教材記事があります。このPre-Readingのセクションで、学習者に向けて二つの質問を投げかけています。
1. Why is Toshiba recalling Sony-made laptop batteries?
 東芝が自社のラップトップに使用されているソニー製電池を回収するのは、何故ですか。
2. How will this recall affect Sony?
この回収により、ソニーはどのような影響を受けるのでしょう。

 私は、授業の中で学生達にこうした質問をし、考えさせるのです。「何故だと思う?」「ソニーはどんな影響を受けると思う?」というようにです。そして、この点について十分にディスカッションをするのです。経営学部の学生なので、それなりに答えが返ってきます。

学生:「収益の悪化につながります」
先生:「今の、ソニーの業績はどのようなものか知っていますか?」
学生:「ソニーなら業績はいいのではないのでしょうか」
学生:「でも、最近ソニーは業績の悪化に苦しんでいるという記事を読みました」
学生:「社長も交代していたと思います」
先生:「そうだね。では皆さんの中でソニーの社長が日本人じゃないということを知っている人は?」
学生:「・・・・」
先生:「日本を代表するソニーのCEOが、もう日本人ではないのです。これは何を意味すると思いますか?」

 こうしたPre-Readingのアクティビティを十分に行い、記事から情報を取りたい、という気持ちになってもらうのです。

 実際に記事を読む前に、ここでもキーワードを確認しておきます。
 このKey Vocabularyのセクションも非常によく出来ていますね。実際の例文も入っているわけで、外国語の教授法をよく知っている先生が作っていることは、見て直ぐにわかります。

 Pre-Reading、Key Vocabularyの後に、本文を読んでもらいます。
「それでは、これから5分間でこの記事を読んでみて下さい」と言うようにストップウォッチを片手に時間を測って読ませます。

 私は、ビジネス誌を読む際には、受験英語のように文法を重視するのではなく、また少々わからないところがあったとしても構わないから、記事から情報を読み取って欲しいと思っています。短時間に重要な情報をつかむことが大事なのです。新聞などは、まさにそのために存在する媒体といえるわけです。学生達には、「新聞を読むのは、もちろん英語の勉強のために読む人もいるだろう。でもビジネス誌を読む人達は、日本のビジネスパーソンの1日が日本経済新聞で始まるように、国際的ビジネスパーソン、欧米のビジネスパーソンの1日は、ビジネス誌から始まるのだ」と話しています。「朝の電車の中で、日経を真剣に読むビジネスパーソンの姿を目にするだろう?彼らは、必要に迫られて読んでいるのだよ。自分の業界がどのように動いているのか、朝の会議の前に知る必要があったり、あるいは、記事の中身が新しい企画を生むきっかけになったりする場合だってある。だから皆が読んでいるのだよ。それと同様に海外のビジネスパーソンもビジネス誌をそういう観点から読んでいる。その中で、関係代名詞がどうのこうのという視点で読んでいる人は皆無だと思う。要するに情報をとるためのツールなのだよ」
学生にはこのように話しています。

 時間を区切って読ませているのはそうした理由からなのです。
 読む際には、以下のような点に留意して読んでもらっています。

  1. 記事のポイントは何か
  2. 成長率などの数字などにも注目すること
  3. 数字などがどのように影響を与えているか
  4. 問題が起きていれば何が問題なのかを知る
  5. 重要なことは今後どうなるか、この点は必ず書いてあるのでそこを押さえる

 これが、全く予備知識がなければ5分ではとても読めません。しかし、十分なPre-Readingのアクティビティを行えば読めるのですね。また、「読みたい」「知りたい」という気持ちになるのです。先ほどのソニーの業績の話などをした後だと学生は「ああそうか。その答えはこの中に書いてあるぞ」と思うわけなのです。つまり…

  【読む記事内容を予測して】→【こういう事なのではないかな?】→【答えを知りたい】

という気持ちになって読んでもらうのです。
 
― BEProの記事には5問の設問がついていますが、それは授業で使われているのですか?
 もちろん使っています。これは、授業の最後に解いてもらっています。時間配分としては 1) World Scopeの部分を40分かけて2) その後にPre-Readingを30分ほどかけてから、3) 5分間本文を読ませます。そしてすぐに、その本文を伏せてもらいます。その状態で 4) 記事の重要な要点を箇条書で裏面に書いてもらいます。つまりPre-Readingの設問内容を正しく読み取っているかがポイントになります。辞書の使用は認めていますが、時間配分も考えるようにと注意はしています。そして 5) 最後の5分程度で5問の問題に挑戦してもらうのです。ただし時間がない場合には宿題にしたりしています。ここまで丁寧に進めていると、問題については皆出来るようになっています。
 
― 授業の流れはよくわかりました。また、Pre-Readingの重要性についても改めて教えられました。ありがとうございます。 一方で英語の読解力を伸ばす上でBEProは有効な教材と言えるでしょうか。

 読解力は、読む対象によってかなり左右されます。日本語でも学生は日本経済新聞を読むことができても理解はできないのと同じで、自分の土地勘がある分野については読解力が高まると思います。つまり、事前の予備知識が多ければ多いほど読解力は高まるということです。

 これは読解プロセスの研究に関する「スキーマ(Schema)理論」に基づく考え方です。スキーマとはわれわれの持つ常識的知識を体系化したものをいいます。この理論によると、読解とは読み手の持つ背景知識(background knowledge)と文章 (text)との間の相互作用プロセス(interactive process)といわれます。つまり、読み手は自分の持つスキーマから最も適切なものを呼び出して、文章と照らし合わせながら内容を理解しようとするわけです。したがって、読み手が適切なスキーマを持っていなければ文章を理解できないし、誤ったスキーマを呼び出すと文章の内容を誤解してしまうわけです。

 BEProは、そうしたスキーマを広げて、土地勘を養うという意味でも役に立つ教材だと言えますね。BEProのような教材を毎日継続することで英文に慣れリーディング力を向上させることに繋げていけるのだと思います。

 
― 最後に大学以外の社会人を含めて、井上先生のBEPro対するコメントいただきたいのですが。また、BEProに対してメッセージなどがありましたらお願いします。

 一流のビジネス誌は、一般のビジネスパーソンにとってはなかなか手が出しにくいものです。BEProは「オリジナルには手が届かない」と悔しい思いをしている人、そういう人にとってのハードルをぐっと下げてくれるものだと思います。
 グローバルな視点を養うには、日本経済新聞の国際ページを読むだけでは不十分ですから、少なくともWorld Scopeをざっと読んで、「グローバルビジネスではどういったことが話題になり、また何が重要なのかを身に付けることが大切だと思います。そうすることによってグローバルビジネスのコンテクスト(context)を身に付けることができると思うのです。実際のビジネスシーンの中でも「今日のあの記事読んだ?」というような会話が起こりうるわけです。

 英語学習だけではなく、ビジネス誌の最新の情報を同時進行で提供してくれるということが、他の教材と決定的に違うところであり画期的な部分です。これは、教材としてだけではなく情報収集のツールとして継続していくことも大事です。

この教材の素晴らしさを一人でも多くの人に知っていただきたいと思いますし、普及してもらいたいと願っています。
 
― 本日はどうもありがとうございました。
 どうもありがとうございました。
 
井上 邦夫氏 略歴
東洋大学経営学部准教授
1951年千葉県市川市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。米国コロンビア大学国
際関係大学院修士。ジャパンタイムズ記者を経て、1987年ロイター通信社入社。経
済記者として主にマクロ経済・金融分野を担当。東京支局、ニューヨーク支局、ロン
ドン本社勤務ののち2000年共同通信社へ。海外部記者として勤務のかたわら明治大学
経営学部兼任講師。2004年4月より現職。

著書:『英語で読む最新世界経済入門』(朝日新聞社、2002年)、『英和国際金融経済辞典(改訂新版)』(研究社、2005年)など
専門分野: コーポレート・コミュニケーション、国際ビジネスコミュニケーション、経済・ビ ジネス英語の教授法
所属学会: 日本広報学会、国際ビジネスコミュニケーション学会、国際ビジネス研究学会